株式会社西部開発農産
生産部 業務課
課長補佐
小原 裕さん
株式会社西部開発農産は本州最大級の農地に米、大豆、小麦、ソバ、野菜などを栽培し、肥育牛の生産加工も行う複合経営も実践しています。耕作放棄地等の耕作依頼も受け規模を拡大。自社直営の焼肉店もあり、安心・安全そしておいしさと楽しさを消費者に届けています。
2021年12月22日に開催した、しごとクロストーク「農業のしごと」の当日の様子を一部ご紹介します。(※情報は開催時点のものです)
株式会社西部開発農産
生産部 業務課
課長補佐
小原 裕さん
株式会社西部開発農産は本州最大級の農地に米、大豆、小麦、ソバ、野菜などを栽培し、肥育牛の生産加工も行う複合経営も実践しています。耕作放棄地等の耕作依頼も受け規模を拡大。自社直営の焼肉店もあり、安心・安全そしておいしさと楽しさを消費者に届けています。
農事組合法人となん
統括管理部 部長
南野 正直さん
農事組合法人となんは、農業組合法人として全国トップクラスの経営規模。高齢化が進む盛岡都南の農業の担い手を育て、農業による地域活性化を目指し、米、小麦、大豆、加工用トマトなどを育て収穫。新規就農者のための研修や農業体験にも力を入れています。
小原さん:株式会社西部開発農産は1986(昭和61)年に設立し36年目です。事業所は北上市和賀町ですが、農地は同市だけでなく、花巻市や金ケ崎町にもあります。農産物を生産するだけでなく食事を提供する「焼肉DININGまるぎゅう」を経営し、直接消費者と向き合っています。海外進出も積極的に行い、ベトナムに現地法人「有限会社西部農産ベトナム」を開設し、海外展開の拠点としています。農地は合わせて約1千㌶、民間の農業法人として国内有数の規模です。農地の内訳は水稲が300、大豆が340、小麦が150、ソバが150㌶あります。会社ですので海外事業部や生産部などの部署があり、社員50名、期間社員14名、パート23名。ベトナムでは12名を雇用し、全体社員の平均年齢は38.9歳です。
小原さん:最近は女性社員が活躍しています。女性正社員は14名いて、事務だけでなく牛の肥育や水稲の苗管理をしたり、100馬力のトラクターを運転したりしています。重機を操作する女性の姿を見ると「かっこいいな」と思います。転職してくる方も多く、トラック運転手、自衛隊員、建設作業員などの経歴を持つ方もいます。そんな職場なので年齢、性別関係なく多様な人材が活躍しています。会社組織ですので産休や育休など働く環境を整備し、休日数が少しでも増えるよう企業として努力しています。
小原さん:地元の工業高校を卒業し、新卒で入ったのは大手の自動車部品工場でした。業務の管理がしっかりしていましたが、個人の考えやアイデアを仕事に生かすということはありませんでした。そんな状況が自分には合わないと感じ、退職して西部開発農産でアルバイトを始めました。そこから正社員に登用され、今は中堅となって農業現場の仕事だけでなく人材育成などもしています。農業は自分で考え、工夫しながらやっていくことが多いです。また基本的には体を動かす仕事で、ライスセンターの乾燥調製をしていると、一日で1万5千歩も歩いています。
小原さん:一番のやりがいは食糧生産を担っている仕事ということです。人間は食べないと生きていけません。お金やものだけあっても食糧がないと。そんな大切なものを作っていることに誇りを持っています。ただ日々の仕事は生き物相手なので、予測不能で大変なことも少なくありません。作物に合わせ仕事をしないといけないので、若いころは友人の結婚式にも行けないことがありました。でも今は違います。会社全体で休みを増やす努力をし、シフトを組んで休みたいときには休めるようにしています。
南野さん:農事組合法人は農業者が集まり、組織する法人、集落営農組織です。当組合は2006(平成18)年に立ち上げた任意組合が始まりで、2013(平成25)年に設立されました。組合員数は995名で役員のほか、職員13名で水稲907㌶、小麦56㌶、加工用トマト1㌶が経営面積です。盛岡の南部にある旧都南村が主なエリアで「地域農業を次世代にうまくバトンを渡す役割を果たしたい」というのが当組合の活動意義の一つです。集落の内外から人材を集め、定着させる。その一方で農家が農業を辞めるという選択肢も選べるような状況をつくりたいと思っています。具体的には新規就農者を最初は組合で雇用して農業を初めてもらい、何年か後に独立してもらう。独立の際は農業を辞めた農家の農業機械なども利用します。
南野さん:設立間もない組織ですが、当初は西部開発農産が一つのモデルでした。会社組織で社員が集まり、事業目的を達成する。若い人に人気があり、機械化が進み効率化が実現できる。そんなイメージは間違っておらず、今でもそんな法人を目指しています。もう一方で、遠野市の宮守川上流生産組合もモデルの一つでした。こちらは農家の集まりで、当法人の形態に近いものでした。岩手の農業は生産規模で抜きんでた作物はないというのが一つの特徴です。でも岩手の農産物は「量ではなく質」、その品質が自慢です。
南野さん:農家に生まれ、いずれは家業を継ぐものと思っていました。ただ大学を出てすぐには就農せず農協の臨時職員や法人の果樹農園に勤めた後、現在の仕事に就きました。実家は典型的な中山間地域の農家です。大規模経営などできず、地域の力を借りないと農業は続けられないと思っていました。そんな思いもあり、今の仕事を選びました。若いころは良かったのですが、年齢を重ねてくると夏の暑さや冬の寒さがこたえてきます。それでも作業前に見る「雲海」など自然の美しさにふれたり、秋の果実や水稲の実りなどを手に取ると、この仕事をしていて良かったと実感します。
南野さん:当組合では農協を辞めた方、食品会社を退職した方、遊技業関係の仕事をしてきた方などさまざまな方が働いています。新規参入者を多く受け入れ、育て独立まで見守ってきましたが、どんな経歴を持った方でも農業に興味関心がある方なら必ずやっていけると思います。農業は種をまいても、肥料をまいても収穫までには時間がかかります。この仕事は「すぐに成果はでない」ものです。農業の人材育成も同じだと思っています。